ひざにやさしい生活スタイル

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膝の痛みの対策と予防 イラスト図解:膝関節の構造・骨格・筋肉 膝の痛みの体験談

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ひざに負担をかけない生活習慣

ひざは体重による負荷を支え、脚の動きをコントロールする重要な役割をもつため、日常生活において大きな負担がかかる場面が多く、痛みや障害が起こりやすい部位です。普段の生活習慣を見直し膝の負担を減らすことで症状を緩和することができます。痛みを解消し、再発を予防するために重要なポイントについて解説します。

<目 次>

  1. 「食生活」について
  2. 「運動」について
  3. 「姿勢や動作、脚の形」について
  4. その他(靴の選び方、入浴習慣、補助具の利用など)

【関連項目】

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1.食生活のポイント

乱れた食習慣と規則正しい食生活

食生活で気をつけるポイントは以下の2点です。


  • 食べ過ぎない、飲み過ぎない
  • 栄養バランスの良い食事をとる

◆暴飲暴食は肥満のもと

食事量が多くなり、一日の摂取カロリーが消費カロリーを上回ると、余ったエネルギーが脂肪として蓄えられ肥満につながります。増えた体重の分だけ膝にかかる負荷も増えます

仕事や家事などで昼間体を動かす機会の少ない人はエネルギー(カロリー)のを消費量が少ないため、その分、食べる量を減らしたり、野菜類などの低カロリーな食品を多く摂取するなどの工夫が必要です。
揚げ物や脂身の多い肉などの油っぽいもの、砂糖を多く含む甘い食品(菓子類やジュース類)、米・パン・麺類などの炭水化物類は高カロリーなため食べ過ぎないよう注意してください。
特に夜間は家でゆっくり過ごすことが多く、一日のうちで最も消費カロリーが少ない時間帯です。就寝時に体内に残ったエネルギーは寝ている間に多くが脂肪に変わるため、寝る前の3〜4時間は食事を控えることが大切です。

<食事は3食しっかりと。時間帯も一定に>

食事を抜いたり、まとめ食いをするのはよくありません。空腹だと体が脂肪を蓄えやすくなるほか、つい食べ過ぎてしまいます。食事は一日3食、毎日同じくらいの時間帯にとることが望ましいです。
また、早食いや、何か別のことをしながら食べる「ながら食い」は満腹感を得にくく、食べ過ぎの原因になります。ゆっくり良く噛んで食べることを心がけましょう。

◆食事が体を作る

骨や筋肉などの体の組織は、食事から摂取する栄養素をもとに作られます。炭水化物、タンパク質、カルシウム、ビタミン、ミネラル、食物繊維といった必須栄養素をバランスよくしっかりとることで骨や筋肉が丈夫になり、痛みやケガの治りも早まります。


ひざの痛みと食事の関係については、別項で詳しく解説しています。

2.運動について

膝や全身を動かす運動を行うことで、筋肉、骨、軟骨、靭帯などの組織が丈夫になり、関節の動きも良くなり、肥満も解消されるなど、様々な健康効果が得られます。適度な運動を定期的に行うことは、ひざの痛みを和らげたり解消するだけでなく、「予防」にも大変効果的です。

推奨される運動は、主に筋肉や骨を強くするための「筋力トレーニング」、関節の柔軟性を高めるための「柔軟体操・ストレッチング」、体力や免疫力の向上、肥満の解消などを図る「全身運動(有酸素運動)」の3種類です。

色々な運動でひざを鍛える

◆ひざの痛みに対する運動の効果


  • 肥満の防止と解消
    意識的に運動や体操を行うことで多くのエネルギーを消費できます。特にウォーキング、ジョギング、自転車、水泳などの有酸素運動は体の余分な脂肪を燃やして体重を減らす高いダイエット効果があります。体重が減った分だけ膝の負担も小さくなります。

  • 骨や筋力の強化
    運動によって適度な負荷をかけることで、骨、筋肉、靭帯、関節包などの組織を強化することができます。それにより膝にかかる負荷を支える力が強まり痛みが軽減されます。また、組織の新陳代謝も高まり長期的にも痛みが起こりにくくなります。

  • 膝の動きが良くなる
    運動によって筋肉量が増えるほど血行がよくなり、ストレッチングによる柔軟性の高まりも加わって、膝がよりスムーズに動くようになります

  • 心肺機能、体力、免疫の向上
    ウォーキングや体操などの全身運動は、心臓・肺・血管などの心肺機能を高め、膝の痛みの根本的な原因である"老化"を遅らせることができます。また、体力や抵抗力(免疫)も高まることで、病気やケガをしにくい体になります。

  • 体が温まる
    運動によって体が温まり、血液の流れがよくなります。血行が促進されると、炎症や疲労の元となる物質が排出されやすくなります。

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3.姿勢、動作、脚の形について

膝に余計な負担のかかる不適切な姿勢や動作を長年続けたことが痛みを引き起こしているケースが少なくありません。姿勢や動きを少し変えるだけでも痛みを和らげることができます。
また、「O脚(ガニ股)」や「X脚(内股)」など、膝が内外に曲がった形をしていると重心がかたよって片方の膝に大きな負荷がかかるため、こうした脚の矯正も痛みの軽減につながります。

◆座り方・座る姿勢

座る時はできるだけ椅子に腰かけるようにしましょう。膝や腰への負担が一番少なく、立ち上がる時にテーブルに手をつくことができるので、それだけひざへの負担が軽くなります。

<イスを使わない座り方について>

  1. 正座
    自然と背筋が伸びるため、腰や背中にやさしい座り方ですが、膝への負担はとても大きいため極力避けましょう。どうしてもという時はお尻の下に座布団などを挟むと膝の負担を減らせます
  2. あぐら
  3. 足を投げ出す
    2と3の座り方は膝の負担は小さめです。ただし背中が丸まりやすく腰や背中にはよくないため腰痛持ちの人は注意しましょう。壁や座椅子の背もたれに背中をぴったりつけて寄りかかると腰の負担が少なくなります
  4. 横座り(女の子座り)
    膝と腰への負担が大きい上に、体のゆがみや膝関節のねじれを生じます。絶対にやめましょう
  5. 立てひざ座り
    背中が丸まり、腰にもひざにも良くない座り方です
  6. 体育座り
    膝の負担は小さいです。両腕でバランスもとれるため楽に思える姿勢ですが、背中が丸まってしまうほか、お尻への負荷が大きく骨盤がゆがみやすいなど、腰や背中にはよくありません。
膝に良い座り方・悪い座り方


◆立ち方・立ち姿勢

膝に良い理想的な立ち方

<ポイント>

  • 背すじを伸ばしてアゴを引いた姿勢」が理想。背中が丸まっていたり、胸を反りすぎていたりと、重心が前後左右にずれた姿勢は膝への負担が大きくなる
  • 上半身や肩の力を抜き、頭の上についた"ひも"で上に引っ張られているようなイメージで
  • 背中に力が入り背筋をピンと張りすぎた状態は、背骨の自然なカーブが消えるため腰に良くない
  • ひざは力をいれずに軽く曲げる。足の親指のつけ根に体の重心を置く(足の親指で立つ気持ちで)

◆歩き方

イラスト図解:ひざにやさしい歩き方

<理想的な歩き方「股関節歩き」>

背筋とピンと伸ばし、膝もしっかり伸びた状態で、かかとから着地します。膝や腰の負担が少ない歩き方です。
歩くのに合わせて自然に手を振り、大股で歩きます。体が左右にブレず、頭も上下に動かず一定の高さを保つのが特徴です。音で表現すると「カツカツカツ」という感じです。


<良くない歩き方「ひざ歩き」>

膝を曲げて上体を揺らしながら歩く「ひざ歩き」は日本人に多く見られ、膝に余計な負担がかかります。
背中を丸め、歩くたびに頭が上下に動いて、足を踏み出すたびに右へ左へと全身が揺れるヒョコヒョコとしたく歩き方です。脚を踏み出す時も着地する時も、常に膝が軽く曲がっているのが特徴です。

膝に良い歩き方・悪い歩き方



<階段の昇り降り>

ひざへの体重の負荷を減らす階段移動

階段では平坦な道を歩く時より膝の負担が大きくなります。特に下りの時にかなりの負荷がかかるため、膝を痛めている人は注意が必要です。

両足を交互に使って片足だけで上り下りをする普通の登り方は、両足に大きな負荷が等しくかかります。膝の痛みがひどい場合は一段ずつ両足を揃えてから動くようにしましょう。
上るときは痛みのない方の脚から踏み出し、次に痛む方の脚を上げて両足を揃えます。こうするとひざに負担がかかりにくくなります。下りるときは上るときとは反対に、痛む方の脚から踏み出して、次に痛みのない脚を下ろしていったん両足を揃えるようにします。


◆その他の日常生活における動作

<立つ、しゃがむ動作>

動作を一つ一つ区切って、ゆっくりと行いましょう。突然ガバっと立ち上がったり、急に座ったり、歩いている最中に急停止するなどの急激な動作は膝関節に大きな負担をかけます。


<立ちっぱなしで作業をする時>

ひざの負担を和らげる姿勢

調理などの家事で長時間立ちっぱなしになる時は、足元に低い台を置いて片足を乗せると楽になります。可能であれば椅子に腰掛けて作業をしたり、支えになるものにつかまったり、台に手を置いて作業をすると良いでしょう。


<重いものを持ち上げる時>

重い荷物を持ち上げる時の姿勢

かがむ時はしっかりと膝を曲げ腰を落とします。
持ち上げる物をお腹に引き寄せ体に密着させます。しっかり両腕で固定したら、腕の力ではなく、太もも、お尻、腰の筋肉をすべて使うつもりで体全体で持ち上げます。


<荷物の持ち方>

荷物を持つときは、片方の手だけで持ったり、片方の肩ばかりにバッグを掛けると、重心がかたよって膝関節の変形が進む原因になります。左右の重さが均等になるようになるべく両手で持ったり、ときどき持ち手を変えるように意識しましょう。
荷物が多く重くなりそうな時は、キャリーバッグ、リュックサック、手押し車などを利用すると便利です。

◆膝にやさしい洋式の生活スタイルを取り入れよう

膝にやさしい生活様式:和式から洋式へ

畳に座ったり、布団を敷いて寝るといった和式の生活スタイルは、イスとテーブルに代表される洋式の生活よりも立った時と座った時の高低差が大きくなります。そのため膝を大きく曲げ伸ばしをするなど負担の大きい動作が多くなります。
生活スタイルを和式から洋式に替えることで、膝の負担を減らし痛みを軽減することができます。


  • 布団をベッドに替える
    しゃがみ込むことがなく、起き上がりも楽になります
  • 畳に座らないでイスやソファーに座る
    椅子は膝にも腰にもやさしい上、立ち上がる時にテーブルに手をつくことができるので膝の負担が軽くなります
  • 和式便座を洋式便座に替える
    しゃがみこんだ状態を維持する和式便座は膝に体重がかかり続けます
  • 階段、トイレ、お風呂など、上り下りやしゃがむ動作の多い場所には手すりを付ける

◆足の形

イラスト図解:O脚・X脚・がに股・内股

<O脚、X脚の矯正>

膝が外側に曲がった「O脚(ガニ股)」や、内側に曲がった「X脚(内股)」は、脚の重心が内側や外側にかたより、片方に体重がかかるため、片方の関節軟骨がすり減りやすくなります。
これらの脚の形の異常がある人は、しっかり矯正してひざの負担を減らしましょう。

こうした脚の形の異常を直す場合、「足底板(そくていばん)」という特殊な形をした靴の中敷きのようなものを使うのが一般的です。詳細は「装具療法-足底板について」を参照してください。


5.その他

◆靴の選び方

靴の種類によるひざの負担の大小

靴は自分の足のサイズに合ったものを選び、靴底が厚く柔らかいクッション性のあるものを使いましょう。サイズの合わない靴、ハイヒールなどのかかとの高い靴、靴底がすり減って斜めになっている靴などは、重心がかたよって膝に余計な負担をかけます。靴底が硬いものは地面からの衝撃を和らげることができません。
スニーカーなどの、ひもで結ぶタイプの靴は安定性が高いためオススメです。

<靴を選ぶポイント>

  • サイズは合っているか
    つま先を奥まで入れた時に、かかとに指一本分のすき間ができるくらいが丁度良い
  • 足の甲と靴の甲のカーブが合っているか
  • つま先は指が動かせるだけのゆとりがあるか
  • 靴底にある程度の厚さと弾力性があるか
  • かかとの上のくるぶしやアキレス腱に靴の縁(ふち)が当たらないか

◆入浴習慣

体を温めて血行促進

お風呂でゆっくり体を温めると、筋肉の緊張がほぐれて全身の血行が良くなります。すると、膝の炎症を強める物質や疲労物質も流れ出てゆきやすくなり、痛みが和らぎます。特に寒い冬や梅雨どき、季節の変わり目は膝が傷みやすい時期です。毎日ゆっくり湯船につかり、膝を温める習慣をつけましょう。

◆装具の利用

ひざを保護・固定する補助具

膝が痛くて歩くのがつらい時は、膝のサポーターや杖などの補助具(装具)を利用すると良いでしょう。詳しくは「装具療法」を参照してください。


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